『興味がない』ではなく『行きづらい』── AIインタビュー100件で見えたTCGイベント参加促進のヒント
AIがユーザーに音声で質問し、回答内容に応じてその場で深掘りを行う「Fast Interview」を活用し、トレーディングカードゲーム(TCG)プレイヤー100名を対象とした自主調査レポートを公開しました。プレイ実態・購入行動・イベント参加状況などを多角的に探りました。
最大の発見は、TCGイベント参加を阻んでいるのが「興味がない」や「熱量が低い」ではなく、より実務的かつ心理的な障壁だったという点です。調査では「イベント参加障壁」に関する声が40件抽出され、参加に至らない理由が多面的に存在することが分かりました。
調査概要
- 調査名
- TCGに関するインタビュー調査
- 手法
- Fast Interview による音声AIインタビュー
- 対象
- 現在TCGをプレイしているユーザー
- 有効回答
- 100名(AIインタビュー完了者)
- 属性
- 20〜30代が中心(70%)/ 男性73%
- 期間
- 2026年5月1日〜8日
- 調査項目
- TCGを始めたきっかけ、継続理由、情報収集、購入行動、イベント参加状況、不満点、離脱可能性など
AIインタビューで見えた、4つの「行きづらさ」の正体
1.「興味がない」のではなく「行きづらい」── 距離・アクセスの壁
不参加理由としてまず多く挙がったのが、距離・アクセスの問題です。特に地方在住者やライト〜ミドル層にとって、都市部の大型イベントは心理的にも物理的にも距離のある存在になっている可能性があります。
「イベントには参加していないが、理由は会場が家から遠いため。近場であれば参加しやすいと感じている」(10代男性・栃木県ほか)
「開催場所が遠いことが理由で未参加。自宅近くで開催されれば参加意向が高まる可能性がある」(20代男性・富山県ほか)
「地元開催で、初心者向けなら参加したい」(20代女性・北海道ほか)
2. 日程が合わない ── 仕事や生活リズムとイベントが噛み合っていない
社会人プレイヤーにとっては、仕事・家庭・移動時間との兼ね合いが参加の大きな壁になります。短時間で参加できる形式、平日夜のカジュアルイベント、オンライン参加型イベントなど、生活リズムに合わせた設計には一定の需要があると考えられます。
「イベントには興味があるが、仕事の都合で参加できていない」(30代男性・東京都ほか)
「仕事と開催日時が合わず、近年は参加できていない。平日夜の開催であれば参加意向がある」(60代男性・福岡県ほか)
「時間が作れないことが、イベント不参加や将来的な離脱要因になっている」(40代男性・兵庫県ほか)
3. 初心者・一人参加の心理的ハードル
イベント不参加の背景として特に印象的だったのが、心理的なハードルです。参加促進には「初心者歓迎、一人参加歓迎、手ぶら参加可、ルール説明あり、勝敗より交流重視」といったメッセージを明確に打ち出すことが重要になります。
「イベント参加には心理的ハードルがあり、初心者向けで一人参加しやすい場を求めている」(20代男性・広島県ほか)
「イベントに参加していない理由はスキル不足ではなく、恥ずかしさ。一人でも参加しやすい形式なら関心がある」(30代男性・神奈川県ほか)
「準備が面倒で恥ずかしさもあるが、近場の小規模イベントなら参加意向がある」(30代女性・兵庫県ほか)
4. 人混み・混雑も参加を妨げる要因に
混雑や待ち時間は、ライト層・家族層・一人参加者にとって参加継続を妨げる要因になります。予約制、時間帯別入場、初心者・ファミリー向け枠、休憩スペースの整備などが求められます。
「大型イベントには一人で参加しているが、共通の趣味で盛り上がれる点を評価する一方、混雑には不満がある」(40代男性・兵庫県ほか)
「大規模イベントは人混みや転売目的の参加者を嫌って敬遠している」(30代男性・埼玉県ほか)
「イベント会場の狭さや待ち時間に不満がある」(30代男性・千葉県ほか)
イベント参加以外に深掘りしたテーマ
TCGを始めたきっかけと継続理由
TCG参入の最大導線は「友人・家族など身近な人の影響」で、特に小学生期の対人接点が強い導線になっていました。継続理由は、友人と遊ぶ楽しさ、勝利体験、開封・収集の高揚感、デザイン・キャラクター性への愛着など、感性的価値が大きく寄与しています。
タイトル別の支持理由(ポケモンカード/遊戯王/その他)
ポケモンカードは「わかりやすさ・IP人気・プレイヤー人口の多さ」、遊戯王OCGは「デザイン・世界観・構築の自由度」など、タイトルごとに支持される理由が異なります。
情報収集手段
情報収集はXとYouTubeが主流で、速報性の高い発売日情報・買取相場・デッキ情報が重視されていました。
購買行動・支出
購入チャネル、月額支出、購入頻度、シングル買い/パック買いの使い分けなどについても調査しています。
最大の不満点・離脱要因
最大の不満は「転売・供給不足による入手難と価格高騰」で、プレイ層・コレクション層の双方に共通する強い阻害要因となっています。離脱要因としては「コミュニティ消失」の影響が大きいことも分かりました。
アンケートでは見えない本音を、AIが言語化
通常のアンケートでは「参加しているか」「年に何回か」は分かっても、「なぜ参加しないのか」「興味はあるのに何が引っかかっているのか」までは見えにくいもの。Fast Interviewでは、AIが回答内容に応じて追加質問を行うことで、「恥ずかしさ」「一人で行くのが不安」「日程が合わない」「人混みが苦手」といった、ユーザー自身も明確に言語化していなかった不参加理由や心理的ハードルを引き出せました。
TCGイベント運営者・カードゲーム企業への示唆
- 近場開催 ── 地域のカードショップや商業施設など、生活圏内で参加できる小規模イベントには潜在需要がある
- 初心者向け設計 ── ルールを確認しながら遊べる会、初参加歓迎の交流会、デッキ相談会など、参加前の不安を下げる設計が有効
- 一人参加しやすい雰囲気づくり ── 一人参加歓迎の明示、スタッフによるマッチング、少人数テーブルなど、心理的ハードルを下げる工夫
- 時間設計の見直し ── 休日日中だけでなく、平日夜・短時間・途中参加可・オンライン参加型など、生活スタイルに合わせた形式
- 明確な参加メリット ── 景品・記念品・プロモカードなど、参加のきっかけになる体験設計
- 競技性以外の参加動機の理解 ── 友人と遊ぶ延長、コレクション・開封体験、初心者同士の交流など、ライトな参加動機を持つ層への導線整備
考察と結論
TCG市場では、競技性の高い大会や大型イベントが注目されがちですが、今回のAIインタビューからは、よりライトな参加動機を持つプレイヤーの存在も見えてきました。こうした層にとって、イベント参加の壁は「TCGへの熱量不足」ではなく、参加するまでの不安や面倒さにあります。既存の競技プレイヤー向け施策に加えて、ライト層・初心者・一人参加者・地方在住者に向けた参加導線を整えることが、さらなる市場拡大につながる可能性があります。